生命が要求する「良い音楽」の「感じ」

普段都会で生活しているあなたが休暇で都会を離れ、爽やかな高原でしばらく過ごしたとしましょう。あなたは仕事や都会の雑踏から解放されて自由で伸び伸びとした気分になり、自然との一体感の中で安心し、童心に帰ることが出来るでしょう。この時自分の肌によく注目すると、都会で生活していた時の警戒態勢を解除し、毛穴が開いて外部と気が交流する状態になっていることに気が付くでしょう。この状態が後述する開閉感覚における「開」の状態です。

休暇を終え、体をリフレッシュしてくれた高原に別れを告げ、再び都会での生活に戻ったとしましょう。あなたはしばらく高原で過ごしていた為にそれとの対比で、都会に一歩足を踏み入れただけで緊張感、うっとうしさ、拘束感、閉塞感、疎外感、不安感といったものを味わうでしょう。この時自分の肌によく注目すると、高原にいた時には解除していた警戒態勢に再び入り、毛穴が閉じて外部との気の交流が遮断されていることに気が付くでしょう。この状態が開閉感覚における「閉」の状態です。

不自然な都会の環境の中で、複雑な人間関係に配慮しながらそれぞれの任務を全うして行く以上、誰でも「閉」の状態は避けられません。しかしながら「閉」の状態は人間の体の正常な神経伝達(東洋医学的に言えば「気の流れ」)を妨げ、それが継続すると肉体的、精神的ひいては社会的にも問題を引き起こすことになります。

従って我々はどこかで「開」の状態を取り戻すことが必要になって来ます。とは言ってもそう頻繁に爽やかな高原に行くことは出来ません。

実は都会に居ながら「開」の状態が作り出されるいくつかの有効な方法があります。その代表的なものが音楽です。良い音楽演奏を聴くこと、それは即ち都会に居ながらにして爽やかな高原に居るのと同じ「開」の状態を作り出すことなのです。音楽は不自然な現代社会の中で我を失いがちになっている「我々」と、我々の本体である大自然とを結び付ける窓口の役割を果たします。

いま良い音楽がもたらすものの「感じ」を説明しましたが、これからご紹介する「開閉感覚」をマスターしてから良い音楽を聴くと、あなたは大自然と音楽の一致を「感じ」ではなく「感覚」として実感し、驚きと共に音楽の価値を再認識するでしょう。

音楽は生命が要求している

「音楽」、それは大変に不可解な存在です。人間は生きて行く為に食べ物を食べなければなりませんが、音楽は聴かなくても死ぬことはありません。にもかかわらず音楽は人類の長い歴史の中で否定もされずに存在し続けて来ました。音楽は生命が強く求めているものなのです。

良い音楽演奏と悪い音楽演奏がある

ロシアの偉大なるピアニスト・指揮者、ミハイル・プレトニョフがインタビューで次の様に話しています。

「人はパンのみに生きるにあらずという言葉があります。本当に芸術を愛する人にとって、芸術は人生で最も重要な役割を果たすのです。旧ソビエト時代もそうでしたが、大変に貧しい人が最後のお金を絵画や本を買う為に使い果たしてしまうことがよくありました。家に食べ物が無いのに芸術を買うのです!」

もちろん彼は「音楽(芸術)には生命にとって何にも代え難い価値がある」と言いたいのです。しかしそれだけではありません。彼は別のインタビューで下記の様な示唆をしております。

  1. 音楽演奏には良いものと悪いものがある。
  2. 良いものの中でも特に良いものがある。(=「生命にとって何にも代え難い価値のある音楽」)
  3. 良いものと悪いもの、良いものの中でも特に良いものの区別が付かない人が多い。

音楽の良し悪しは「肌」で聞き分ける

新聞の夕刊の記事によく出ているクラシックのコンサートに対する音楽評論家の批評を一度でも読んだことのある方は次の様に思うでしょう・・・「クラシック音楽の良し悪しの判断なんて難しくてとても自分には出来ない!」

確かにその通りです。また仮に少し専門的に勉強して音楽評論家と似た様なことが言える様になったとしても、人によって意見はマチマチで正解はないでしょう。「音楽の良し悪しは人の好みによって決まるもので、絶対的な判断基準などあり得ない」ということになってしまいます。これまた然り、音楽を「耳」だけで聴いている限りはそう言う結論になるのも止むを得ないのです。

しかしながら今ブームになっている「音楽による生命に対する癒しの効果」とは、果たして音楽評論家等が評価している次元の基準で決まるのでしょうか? それに対する答えが「否」であることは、このホームページを読まれて「音楽を肌で聴く」ことをマスターされた時点ではっきりとお判りいただけると思います。 音楽を「耳」で聴くと同時に「肌」で聴く、即ちあなたの皮膚に先天的に備わっている「開閉感覚」という、今まで注目されることの無かった感覚を使うと、それまで難解だったクラシック音楽の良し悪しが演奏が始った瞬間にはっきりと判り、更に良いものの中でも特に良いものの判別も出来る様になるのです。 

そして注目すべきことは、開閉感覚で音楽を聴くと下記のことが明らかにされるということです。

  1. 音楽の「良し悪し」は作曲家や音楽のジャンルによって決まるのではなく、演奏者によって決まる。
  2. 聴衆にとっては、例えばある演奏が、Aさんには良いがBさんには良くない、ということは起こらない。程度差こそあれ、すべての聴衆にとって良いものは良く、悪いものは悪い。
  3. 演奏者の良し悪しは経歴や知名度と一致しないことが少なくない。

良い音楽を肌で聴くことにより本当の感動が得られる

更に特筆すべきことは、音楽を「肌」で聴くことにより、特に良い音楽であればあなたはそれまで気が付かなかった強い感動即ち「絶対的感動」、理屈抜きの「無条件の感動」が体に生じるということです。

この感動は私達が日常生活で経験する、何か感動する理由のある「条件付感動」とは異質のものです。それは丁度私達が海や山の大自然に出会った時に、訳もなく体の内側からこみ上げて来る感動と全く同じものです。

感動についてもう少しご説明しましょう。

二種類の感動と音楽

感動には二種類あることにお気づきでしょうか?

例えば志望校の受験に合格したとか、サッカーで日本チームが国際試合で優勝したとかいう時に、心に感動が生じます。 一般的に知られているこの種の感動はすべて何等かの理由があって生じるもので、これを「条件付感動」と呼びます。

この感動は激しい場合もありますが、その条件が無くなれば消えてしまう一時的なものです。また期待していた結果が得られなかった場合は落胆することになります。従って「相対的感動」と呼ぶこともできます。何かを期待して生きている限り、私たちは感動と落胆、即ち喜怒哀楽を繰り返す人生を送ることになります。

実はあまりはっきりとは意識されていないのですが、私たちの体の中に生じているこれとは別の感動があります。例えば私たちが探し物を見つけた時や、道に迷った末にやっと目的地にたどり着いた時に生じる、ホッとした安心感を伴った感動があります。

これらは探し物や目的地が見つかったという条件があったので生じた感動ではなく、探し物や目的地が見つからないという心の動揺が去ったために生じるものです。長年目標に向かって努力して来たが力不足で叶わなかったかった時にも、炎が燃え尽きて静寂が訪れるが如く、この種の感動が生じる場合もあります。

この時よく自分自身に集中すると、それは心ではなく体に生じている感動であることに気が付くと思います。そしてそれは前述の心に生じた感動と比べ、自分にとってはるかに大切なものであることに気がつくでしょう。

いま感動が「生じる」と表現しましたが、正確には感動は生じたのではなく元々あったもので、心の動揺が去ったのでその存在に気がついたということです。この感動は私たちが生きているだけで常に生じているもので、これを「無条件の感動」あるいは「絶対的感動」と呼びます。

絶対的感動と相対的感動との関係は、大海とその表面に生じた荒波、と考えると理解し易いと思います。私たちは色々なものに惹かれたりあるいは忌み嫌ったりして心がいつも波立っているために、その奥に存在する絶対的感動に気がつきません。一方、自然のままに生きている幼児や犬や猫などのペットたちはに絶対的感動の中に生きております。そのため彼らに接すると同調して私たちの中に絶対的感動が生じます。彼等は「生きていること自体が感動である」という、すつかり忘れ去られている真理を私達に思い出させてくれます。

良い音楽演奏は私たちの中にある絶対的感動に気づかせてくれます。それは聴衆にとって新しい体験ではなく、心の故郷に戻った様な懐かしさを伴った、静かで温かい感動です。その感動によって人々の波立つ心は鎮まり、正しく生きる勇気が生じます。これこそが音楽の真価です。

肌の感覚は人生のすべてに応用出来る

「肌で聴く」ことの出来る音楽はクラシックだけに限られている訳ではありません。クラシック以外のどの様なジャンルの音楽でも即座にその良し悪しを判別出来ます。そして更に一旦この感覚の使い方をマスターしてしまうと音楽以外の芸術でも、例えば絵画や彫刻等の作品を「肌で見る」ことによってその良し悪しを判別出来る様になります。

いや、音楽を始めとした芸術作品の判別などはこの感覚の用途のほんの序の口に過ぎません。「肌」の感覚を使うことの真価は、あなたがそれを自分の日常生活を始めとして人生全般に応用出来る様になった時に実感されるでしょう。

開閉感覚は次のページの項目に従って訓練することにより、誰でも起動することが出来ます。

 

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※ 必ず「開閉感覚起動法入門」を読んでから「良い音楽の聴き分け方」に進んで下さい。