公開されたのは予選の点数のみ

ショパンコンクールの採点表が公開されました。

と言っても公開されたのは3回行われた予選(stage1, stage2, stage3)だけで、ファイナルの点数は公開されませんでした。

ファイナルは審査員達の点数の平均から導き出される順位が3分の2の賛成が得られなかったため、各順位毎に投票し、その結果に半数の賛成が得られればそれに決めるというパターンになった様です。詳細は英文ですがこちらに出ております。

点数を公表しないということは、点数の順位とは異なる順位になったからではないかと疑ってしまいます。点数を公表しないのなら、せめて審査員毎に誰に投票したかを公開して欲しかです。

Bruce Liuは予選からダントツ

ファイナル出場者の予選3回の平均点を計算したのが下の表です。

最終順位 stage1 stage2 stage3 平均 予選順位
1 Bruce (Xiaoyu) Liu 23.00 23.03 23.22 23.08 1
2 Alexander Gadjiev 22.66 21.41 21.75 21.94 2
2 Kyohei Sorita 20.40 21.50 21.57 21.16 6
3 Martín García García 19.91 20.14 21.09 20.38 10
4 Aimi Kobayashi 21.43 20.47 22.36 21.42 5
4 akub Kuszlik 21.67 21.20 22.00 21.62 4
5 eonora Armellini 21.05 20.60 20.55 20.73 8
6 J J Jun Li Bui 21.49 22.91 21.31 21.90 3
入賞外 Eva Gevorgyan 21.66 20.04 21.40 21.03 7
Hyuk Lee 19.48 19.91 20.20 19.86 12
Kamil Pacholec 19.92 20.04 20.43 20.13 11
Hao Rao 21.69 20.26 20.22 20.72 9

これを見ますと第1位のBruce Liuだけが23点台で、22点台は一人もおらず、他は21点以下でした。Bruce Liuの演奏は私にはあえて聞きたいという演奏では無いのですが、審査員達の評価基準には一番合っていた様です。

Bruce Liuが第1位になる聴き方

審査員の判断も理解したいと思って審査員全員の写真に同調すると、前胸上部の気道の開き方が10パーセントくらいの感じであるということが分かりました。この態勢でBruce Liuの演奏を聴くと、何かのショーを見ている様で結構魅力的に見えます。なお反田君のファイナルの演奏はその聴き方をしてもかなりいいです。お陰で聴いている時の審査員の状態は分かりましたが、私には長く続けていられない聴き方です。

ショパンコンクールの優勝者だけは体にプラスになる演奏者が選ばれるという伝統が破れ、世の中がそう言う流れになっているかと心配してしまいます。新型コロナウィルスをこれほど蔓延させてしまった人類の免疫力低下対策としても、良い音楽演奏は役割を果たすことが出来ます。

音楽にそこまで大きな役割を期待しなくても、聞くには貴重な時間を費やすのですから、どこが良いのか知性で探さなければならない様な演奏ではなく、何も考えずに体を預けていれば生命力が蘇って来る音楽演奏を聞きたいです。

反田君の2位だけが救い

反田君の予選3回の平均点は6位だったのに2位になったということは、ファイナルでの開Sの演奏が非常に高く評価されたということで、あの演奏ではさすがの審査員も感性が少し働いたのかも知れないということが救いでした。

開B以上の審査員の審査

ケナー、ダンタイソン、ハラシェヴィチ等開B以上の審査員も、演奏者の弾き方に注目しなければならないせいか、気道の開き方は50~60パーセントになっていました。聴衆に宇宙的感動をもたらす演奏者であっても、審査する立場になると宇宙的感動をもたらしているかどうかは審査基準項目には入っていない様です。

ケナーはStage1で25点・Stage2と3で24点を付けたカナダのJ J Jun Li Buiか、Stage2で24点・Stage1と3で23点を付け、Finalで素晴らしい演奏をした反田君のどちらかに第1位を投票したのではないかと思います。J J Jun Li Buiは確かにケナーの言う「ショパンは頑張らずに、そして気高く演奏するのがベスト」という演奏を実現している様に見えます。

ダンタイソンとハラシェヴィチは一貫して高得点を付けている出場者はなく、開Bだからといって特徴は掴めませんでした。ダンタイソンの弟子である第1位のBruce Liuがもし彼の弟子でなかったら何点を付けたかが知りたいところです。

音楽コンクールが取り入れるべき聴衆の反応

今回のショパンコンクールでは聴衆の反応が伝統通りでなくなってしまいました。とは言え今迄この最古のコンクールが優れた演奏家を輩出して来た大きな要因が聴衆の反応であることを考えると、クラシックは専門家でなければ分からないとして結果的に専門家だけしか楽しめない音楽の世界を作ることから脱皮することが必要と思います。

聴衆賞というプレステージの低い賞を設けるのではなく、審査員が聴衆の反応も取り入れて審査することがクラシックファンを増やし、クラシック音楽の発展をもたらすことにつながると思います。クラシックに限らず色々な分野の音楽を演奏する角野隼人君がインタビューで「クラシックってかっこいいじゃないですか!」と言っていました。そうです! クラシックって本当はかっこよくて、みんなが聴きに集まって来る筈のものだと思います。